5月14日(木曜日)一般社団法人Jミルク(日本酪農乳業協会)の主催で報道関係者を対象とした学校給食と牛乳の係わりについてのセミナーが開催され、日本の学校給食の歴史や子供と牛乳について講演が行われました。
講演は2005年まで文部科学省学校給食調査官を務め、現在女子栄養大学栄養科学研究所の金田雅代客員教授を招き、戦後日本の学校給食再開から学校給食法の成立、改正、食育基本法の施行、栄養教諭制度の確立までの歴史を振り返り、その中でも学校給食における牛乳の必要性について解説していただきました。
主催者Jミルクの専務理事の挨拶、そして金田先生の講演冒頭でも三条市の学校給食で牛乳が休止されたことが取り上げられ、牛乳の消費量のうち大きなウェイトを占める学校給食牛乳の休止については酪農牛乳業界でも敏感になっていることが判ります。
主催者のJミルク専務理事の挨拶では、三条市についての報道があった後に、各社から問い合わせが相次いだということもあり、39回目のメディア向セミナーのテーマとして学校給食を選んだという説明がありました。 今回の講演の狙いは最近の学校給食について改めて知っていただき、考えてもらおうというものでした。
金田先生は講演に先立ち「学校給食の印象は皆さんそれぞれの喫食体験がもとになっていて、年配の方から最近の給食は贅沢になったと言われることがある。50年間この仕事に係わってきたが、知られているようで知られていないのが学校給食なんです」と前置きしながら、戦後の再開から現在までの日本の学校給食制度の成り立ちの歴史について詳細な説明がありました。
そして、学校給食は生きた教材であること、栄養教諭・学校栄養職員とは何か、学校における食育の役割とは何か、安心・安全な学校給食とは何か、学校給食携わる者としては知っておかなければならないことばかりでしたが、ご自身がその変遷の中心にいた方の話ですから説得力があります。 見習う点が数多くありました。
自称「鬼の金田」先生も学生相手に10年間講義をしてきたこともあり「優しくなったと言われている」とのことでしたが、文部科学省時代は着任2年目に堺市の集団食中毒事故が発生し、その後の学校給食の衛生管理基準を構築してきた方ですが凄味も健在です。「当時はぶれるわけにはいけなかったから(笑)」と述懐されていましたが、ポイントはしっかりと抑えておられます。
子供と牛乳の関係については戦前から戦後、高度成長期にかけて当時の仙台市で行われた身長・体重の年次推移や、学校給食実施率と体位の推移などのデータを示しながら、成長期における牛乳の役割について説いてくれました。
そして、日本の学校給食は子供の心身の健康に大きく貢献してきたものであり、牛乳は貧しい時代にあってはたんぱく質の供給、現在はカルシウムの供給源として欠かすことのできない大切な食品であること。そして、学校給食は1日3食のうちの1食に過ぎないが、成長期に必要な栄養素を担保するだけでなく、子供たちに「和食」をはじめ多様な食文化についても教え、学校給食全体の中でも「生きた教材」として重要な役割を果たしていると述べていました。
件の三条市においては4月に一旦牛乳をさせましたが、現在休止期間中の検証を行っていて、6月までには10月以降牛乳を完全に廃止するのか継続するのか、あるいはその中間的な方法で行うのかを決めるものとしています。
牛乳に替わるカルシウム摂取として、ヨーグルト、節粉の入った汁物など献立にも工夫がされましたが、それについて学校長から問題提起がありました。 昨年度に1年かけて行われていた京都市の学校給食における「和食」の検討会議では牛乳を排除しない結論に至りました。
東京都の武蔵野市と同じにように、和食の献立の際に牛乳をつけない、という結論になるのではないか、と予想しています。 いずれにしても、その結果を全国の栄養教諭・学校栄養職員が注目しています。
ところで、講演後、報道関係者から「学校給食法を読んでみたが、よくわからない。学校給食は義務なのか?誰が行うのか?」といった質問もあり、学校給食関係者からの情報発信が足りないのだと感じました。やはり情報発信を続ける努力を怠ってはいけないと考えました。
坂巻喜好 さん
2016年11月15日 3:17 PM
金田先生は、2015年まで文部科学省の学校給食調査官を務められていたのでしょうか?
kyushoku さん
2016年11月16日 10:58 AM
坂巻様
給食ひろばをご覧いたたきまして誠にありがとうございます。
ご指摘の件、申し訳ございません。小職のミスにより2015年と記載しておりましたが、学校給食調査官を2005年に退官されていらっしゃいます。
つきましては、本文も訂正させていただきました。
ご指摘いただきまして重ねて御礼申し上げます。今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。