2月27日の土曜日、昨年の第10回全国学校給食甲子園決勝大会に出場した長井学校給食共同調理場が出品した献立を調理するという講座が同市の公民館で開催されました。 主催はレインボープラン推進協議会、後援は長井市教育委員会、1000人芋煮実行委員会です。 長井市学校給食共同調理場の調理業務を請負う株式会社ニッコクトラストの調理員の皆さんによる協力がありました。
レインボープランとは、市民、農家、行政が密接に係わり合い、市民は家庭の生ごみを分別、行政は回収とコンポスト化、農家は堆肥を使って生産を行う、という循環社会を目指す活動です。 長井市学校給食共同調理場から出る生ゴミもコンポスト化されています。
今回の講習会は市民の方に食や環境への関心を高めてもらうためにレインボープラン推進協議会が開催している市民講座の一貫として行われました。
まずは、栄養教諭の山口先生から、全国学校給食甲子園についての説明と出場報告がありました。 お話はどちらかというと保護者や大人の参加者向け。学校給食において地産地消が求められた経緯やメリット、課題などの説明もありました。 決勝大会前夜に行われたレセプションでのプレゼンテーションに用いたポスターも広げていました。
また全国学校給食甲子園に出場した経験や実績について、市民の方に関心を持ってもらえるように、積極的に活用していきたいとおっしゃっておられました。 地場産の食材や学校給食について家庭、学校、地域で理解を深めてもらい、学校給食を良くしていきたいという狙いがあります。
共同調理場で調理業務を担っているニッコクトラストさんからの説明もありました。 味はもちろん見た目も大切にしていること、野菜の切り方にも手間をかけていること、日頃の衛生管理について、今回のような地域の食育イベントにも積極的に参加すること、バイキング給食では子供たちの前に出て給仕をして、調理師やパティシエなどの仕事などの紹介をしていることなど。 従来はこういった説明を栄養教諭がひとりでやってしまうところですが、委託業者さんがここまでのプレゼンテーションを任され、しっかり丁寧に説明できるのは素晴らしいことだと思いました。
さて。 いよいよ調理実習にとりかかります。 全国学校給食甲子園出場に出場した梅津チーフ。 子どもたちの視線も集中していて力が入ります。 実際に野菜を切りながら、子どもたちにその切り方について説明するのはそれほど機会もないので難しいと思います。 下を向いてしまいますし、声も通りにくいです。 この場面では、サポートする調理員が説明してもよかったかな、と思いました。
今回調理するのは、全国学校給食甲子園の出場献立のうち、「馬のかみしめご飯」、「旨Sioいも煮」のふたつです。 まずはお米を研いで馬のかみしめご飯を炊く準備。 子どもたちはお米がこぼれないように慎重にすすいでいました。
「馬のかみしめ」は山形の特に長井市で栽培されてきた大豆の在来種です。大豆になると豆の表面に馬が咬んだような跡があることから、「馬のかみしめ」といわれるようになったそうです。 生育のばらつきがあり、形状も平たく選別しにくかったため、一時生産農家さんがなくなっていましたが、最近長井市の伝統野菜として再び栽培されるようになりました。 こういった地域の取り組みも、学校給食の中に取り入れられ実体験として子どもたちに伝えているのです。
さぁ、「旨Sioいも煮」にチャレンジです。 みんなで野菜をたくさん切りました。 子どもたちはそれほど経験がなさそうでした。 見ているほうがヒヤヒヤします。
里芋は硬いし、ヌルヌルしますから大変です。 みんな頑張れ頑張れ。
旨Sioいも煮は、山形名物である「いも煮」の従来の組み合わせ「牛肉+醤油味」や「豚肉と味噌」ではなく、「馬肉と塩味」というところがシオ、でなくてミソです。 いも煮守旧派二大勢力に対抗する第三極として長井市がアピールしているものです。 こういったご当地グルメも学校給食に取り入れ、町おこしの機運を高めるという役割もあります。
野菜は一度下茹でします。 そして馬肉も別に一度下茹でしてあくをとっておきます。 そうすることによって、澄まし汁にちかいクリアないも煮ができあがります。 これも、第三極を狙う旨Sioいも煮の特徴です。 馬の脂もひとかけらを入れて風味を増します。 味付けは薄口醤油です。 本来は白髪葱をふわっと載せるそうなのですが、ここは学校給食ですから鍋の中で一緒に煮ておきます。
お父さんが参加しているチームがありました。 お母さんたちはすばやく料理を作りますが、お父さんたちが料理を始めると意外とこだわりますからね。 納得できるいも煮ができましたでしょうか。
さて、この調理実習、共同調理場の調理員さんが総出で参加されていました。 学校給食甲子園の他の目ニュー「秘伝豆の揚げ出し豆腐」、「じゃこと野菜のナムル」を予め作っておられ持ち込んでいるのです。 大変だったと思います。
献立は、みんなが作った馬のかみしめごはん、旨Sioいも煮、と秘伝豆の揚げ出し豆腐、じゃこと野菜のナムル、です。学校給食甲子園にはりんごがつきましたが時期ではないので、梅津チーフによるスペシャルなデザートがつきます。
自分で作った給食はいかがですか?
絶対おいしいよね。
「馬のかみしめ」のお話をしてくださった生産者さんのご家族も参加していました。 小さいお子さんですが、パクパクもりもり食べていました。 大きくなって長井市の学校給食をいっぱい食べてくださいね。
っと、みんなで食べていると、突然、馬!UMA! バーニック・ナガイが登場。 その正体は、山形の食文化を応援するために、ペルセウス座流星群に乗ってやってきた馬型宇宙人です。 いも煮をしっかり煮込むためのグローブをしています。 子どもたちも大喜び。 全国学校給食甲子園には応援に駆けつけるはずだったのですが、諸般の事情で実現しなかったものですから、記者も大喜び。
子どもたちとハイタッチ! 急がしそうにして帰っていきましたが、バーニックのツイッターを見るとちゃんと給食を食べていたようなので安心しました。 みんなで、ごちそうさまでした。
レインボープラン推進協議会のお話も伺えました。 循環型社会を目指すなかで学校給食の調理残渣や食べ残しを堆肥にしてその堆肥を土壌の活性化に用いてそこで野菜や米を作る。 それを地域の中で廻していくこととその活動を広報することにより市民の意識づけにもつながり、その結果食べ残しを減らしたり、地産地消を高めていくことも可能であり、それが浸透しているとのことでした。 そしてこれからさらに波及効果が得られるであろうというお話をいただきました。
試食が終わってから参加者の皆さんの感想や質問を聞いていても、学校給食における地場産物の活用状況や、給食費のことなど、とても具体的な話をされるので、市民の参加意識が高いと思いました。 そんな環境の中で学校給食も一緒に育っているのだな、と思いました。 全国学校給食甲子園に出場できたものそういう活動があったからなのでしょう。
何より、そういう地域で育っている子どもたちは、それが当たり前のこととして成長していくのだろうな、と頼もしく思うし、羨ましくもありました。
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