10月23日の木曜日、鎌倉市の鎌倉駅地下道の「ギャラリー50」と、鎌倉市生涯学習センターの2か所で、それぞれ第28回学校給食展、学校給食説明会が開催されたので見学に行ってきました。
こちらも第28回を数える恒例のイベントです。 これまで鎌倉駅の地下道のギャラリーでのパネル展示だけだったのですが、市民に向けて学校給食についてより理解を深めてもらうのと、さらには市民の方の反応を知りたいということで、今回初めて学校給食説明会を開催されたのでした。
始めに学校給食の目標があった
JR横須賀線鎌倉駅を挟んで東西に分かれている鎌倉駅地下道です。 この壁面に「ギャラリー50」があります。 こんなところで?とお思いになるかもしれませんが、この地下道を歩くひとたちの交通量は相当なものです。
西側が市役所、東側が小町通、若宮大路という位置関係にあってそれをショートカットできる地下道です。 日中は市民の方や観光客の往来でごった返していますが、常設の横山隆一画伯の「鎌倉カーニバル」の陶板画が目を楽しませてくれます。
そのギャラリー50で10月21から27日まで学校給食についての説明ポスターが展示されています。 みんな立ち止まって見ていますので、写真を撮るのがけっこう大変でした。
まずは、学校給食の7つの目標。 学校給食法第2条。 給食について市民の方に理解を深めていただくためのは、その目標について外すことはできません。 学校給食を実施するに当たっては、義務教育諸学校における教育の目的を実現するために、次に掲げる目標が達成されるよう努めなければならない、と定められているのです。
1.適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
2.日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
3.学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
4.食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
5.食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
6.我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
7.食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。
鎌倉市では昭和10年に学校給食があった?
そして学校給食の歴史の説明。 昭和24年(1949年)鎌倉市立の小学校全校で給食が行われるようになったそうです。 週4から5回の給食が行われ、そのうち1~2回は脱脂粉乳におかずが一品ついていたということで、その献立例として脱脂粉乳と野菜ひき肉の油いためと例示されていました。
しかし、実は鎌倉市では昭和10年(1935年)に第一小学校で好き嫌いをなくすために2、3、4年生の一部の児童に対して給食を始めていました。 給食の内容は半つき米を中心とした栄養食と呼ばれていたそうです。 半つき米は、ビタミンB1・B2が多いので脚気などの栄養障害を防ぐために出されていたと考えられています。
そして昭和26年(1951年)にはパン+脱脂粉乳+おかず一品の完全給食が始まりました。 この頃鎌倉市では既に栄養士が各校に配置されていて、給食の内容は各校がそれぞれ決めていたそうです。 なお、学校給食法の制定公布(1954年)の3年前のことです。
冒頭に触れた「鎌倉カーニバル」は昭和9年(1934年)に久米正雄、大佛次郎などが発案したものです。 この地に居を構えた鎌倉文士たちが、昭和の初めにフランスで見た謝肉祭、カーニバルに感銘を受け、鎌倉で実現させたものです。 若宮大路でのパレードには数十万人もの見物客がやってきたのでした。 そんな鎌倉の先進的な風土を感じますね。
鎌倉では地産地消にもこだわっていた
最近では、テレビでも駅前の市場で売られている鎌倉野菜や、鎌倉野菜を使ったお洒落なレストランが紹介されることが多く、鎌倉市で収穫される野菜がブランドになっているんだなぁ、と感じます。 おそらく学校給食で使うには値段が高いだろうなぁ、と思っていましたが、それでも鎌倉市はチャレンジしていました。
食材の旬や食文化について理解を深める大きな役割があります。 鎌倉市では、市内で獲れる水産物や遊休地で栽培した農作物を学校給食に取り入れています。 遊休農地は放っておくと雑草が生えて野菜が作れなくなります。 そこで他の農家さんたちが協力して、冬瓜や、サツマイモ、かぼちゃなどを育てているので、その野菜を給食に取り入れています。
そのひとつが大丸冬瓜。 冬の文字が使われていますが旬は夏です。 今回の展示では、冬瓜の栽培の様子、冬瓜を使った献立(生揚げと冬瓜の煮物、冬瓜入りスープ、冬瓜と海老の葛仕立てなど、そそられますね)、そして学校の現場でどのように冬瓜を紹介しているかを写真を使って説明されていました。
そして、実物の冬瓜とドーンと。 説得力が違います(笑)。
郷土料理給食や児童の作品も
その他、全国の郷土料理を給食に採用した献立の紹介も。 郷土料理と言えば、鎌倉には「けんちん汁」がありますね。 説明会ではこのけんちん汁のレシピの紹介が置いてありましたのでいただいてきました。
また、子供たちの俳句のような川柳のような作品の掲示も。 児童の素直な心の俳句には釘付けになりました。 しばらく動けず、次の給食説明会に遅れそうになりました。
地元産のわかめも
学校給食説明会の会場にやってきました。 基本的には地下道のギャラリー展示の説明ではありましたが、市民の方も数多く出席されていました。 特に就学前の小さなお子さんがいらっしゃるママが多かったように感じます。
学校給食の説明は栄養士さんがお話をしてくれました。 そして、質問には、学校給食担当の課長さんや栄養教諭さんが回答されていました。
今回は、鎌倉産わかめのお話もしていただきました。 鎌倉では初春に港の近くでわかめを干す風景を見ることができます。 値段は高めでも鎌倉市ではこの地場産わかめを給食に多く取り入れていました。
1月から3月にかけて収穫される若布を漁師さんに頼んで湯がいてから1キロごとに冷凍保存してもらっているのだそうです。
そして、給食に使う日に解凍して使用します。 アレルゲンであるエビやカニが混入しているかもしれないので、念入りに水洗いをします。 湯がいてきれいな緑色になったところで冷凍するので、給食でもその色が活きてくるのだそうです。 いろんな工夫をされているんですね。
給食説明会では食育カルタ、給食室で使われている色違いのエプロン、強化磁器食器などの展示もありましたが、質問時間も余裕をとっていたので、あっという間の1時間となりました。
あちこちの学校給食展にお邪魔しているところではありますが、全国共通の目標を掲げた普遍的な学校給食ではあるけれど、やはりそれぞれのこだわりがありますね。 鎌倉市さん、ありがとうございました。
今回の学校給食説明会の会場はこちら。