6月29日の朝、NHKの全国ニュースによる「コメどころの新潟県三条市が、今年9月から給食の献立から「牛乳」を外す方針を固めた」という報道から始まり、6月末から7月初旬野の新聞には「給食の牛乳を廃止」という見出しが躍り日本中で話題になりました。 記事をよく読んでみると給食とは別に「ドリンクタイム」で牛乳を提供するということになっています。見出しだけみれば牛乳の提供自体がなくなると誤解しそうです。
実際に三条市へ「牛乳をなくすとは何事だ」という電話が入っていたそうです。 三条市の担当者に話を聞いたときに聞いた話です。「みなさん誤解があるようですが・・・」と言われていました。
今回の件で「牛乳なし給食」という呼称が一般 にも定着したようですが、それが夏休み明けの2学期から始まります。 牛乳を休止していた期間、煮干し粉やヨーグルトなどの食材ではメニューが「固定化」するとして、牛乳は給食と分けて提供するとのこと。
三条市の説明によると、牛乳停止期間の評価は給食残量調査を以って行ったとありました。 牛乳を提供していた11月と牛乳停止期間中に大きな差はないと結論づけていましたが、少し怪しいです。 実際には小・中学校ともに残量は増えています。 中学校の残量が多く中学校の場合は主食量やおかずの量が増えたことが影響していると考察されていました。 小学校については試行期間中インフルエンザや風邪の流行で体調不良者が多かったという考察がなされていました。
また、6月30日に行われた学校給食運営委員会での配布資料のうち、担任が観察した「子どもたちの喫食状況で気になったことについて」の記述では、牛乳停止の良い点として482件、牛乳停止の問題点として547件あったとなっています。煮干し粉とヨーグルトについて問題とした意見が多く見受けられました。 「和食にヨーグルトは合うのか」という意見がありました。
そうなのです。この試行の計画を聞いたときから、ご飯に牛乳が合わないという牛乳の代替としてヨーグルトを提供するって何なの??という疑問がずっとありました。 今回の結論を見るとそれほどヨーグルトに頼ることもなさそうです。
ところで、今回の報道で気になったのは、何故「廃止」という言葉を使ったのか、という点です。「牛乳を給食とは別に提供する」でよいではないか、という疑問がありました。 それについては三条市長の意向に沿った表現だったのかな、と考えています。報道側がセンセーショナルに扱うという癖を割り引いても、6月29日の多くの人たちが見ている全国のニュースでこの件を取り上げたのも何かの意思を感じます。 しかも、学校給食運営委員会と教育委員会での承認を前に、NHKを利用してリリースしました。明らかに三条市は全国にこの件を発信したかったのだと考えています。
そして、給食から「廃止」するということはドリンクタイムに提供する牛乳は「学校給食用牛乳」には適用されないから、購入価格は市販価格と同等になってしまうだろうな、となると、給食費は厳しいな、そもそも、それは牛乳代であって、給食費ではないな。 この牛乳代金の負担に関する法的根拠がなくなるな、児童・生徒が牛乳いらないと言ったらどうするのだろう。 また、「学校給食栄養報告」には牛乳が入らないとすると、どんな報告になるのだろうという点でした。
その点を三条市に電話で伺ったところ、このドリンクタイムに提供する牛乳も「学校給食用牛乳」であり、栄養報告にも牛乳の分を加えて提出するそうです。「別の時間に提供するだけです」という点を強調しておられました。
なるほど、開示された資料を読むと、「米飯食に合わない牛乳を給食時間には提供しない。しかし、『豊かでおいしい米飯給食』にするためには現時点では、牛乳からの栄養摂取が必要なことから、別にドリンクタイム(牛乳飲用時間)を設定し、牛乳を提供する。」とあります。
ドリンクタイムはいつが良いのか、という点においては各学校に任せるというスタンスです。 給食の直後でも良い、とのことでした。 三条市では、完全米飯給食へ移行する前に一度休み時間に提供したことがありましたが、学校運営に支障をきたしたこともあり、取りやめた経緯があります。その点については「当時は周知が徹底できていなかった」というコメントがありました。
昨年の一定期間牛乳休止を決めた時点で、日本栄養士会、全国学校栄養士協議会ともにその動きに反対する意見書を公開しましたが、今回の「ドリンクタイム」についての意見は出ていません。どうやら栄養士の立場としては許容範囲のようです。
一方で、一般社団法人Jミルクは、三条市で牛乳中止の検討が始まった以降、多くの専門的な立場の組織や研究者の方々が、学校給食における牛乳の役割について、適切なご指導をされてきたことの成果であり、心から感謝する、としながらも、牛乳を上手に活用しながら栄養的なバランスを確保し、食育活動の推進と併せ、子ども達の成長や健康を支えていくという、これまでの学校給食の仕組み、関係者の永年の努力や経験を無にするものであり、残念。今回の決定は、一部の情緒的主観的な意向が強く働いているように感じられ、公的立場としての行政の決定理由としては相応しくないのではないか。という見解をしめしています。
牛乳を給食とは別の時間に提供する、という結果になりましたが、今回の決定は俯瞰的に見ると、やはり学校給食は自治であって、学校給食の内容について、その設置者である市町村が決定できるのだということを改めて示しています。そのことが全国に伝わったという点においては意義のあることだったと
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